『茶の本』第7章 茶の宗匠たち

P92「茶人たちの考えでは、真の芸術鑑賞は、芸術から生きた感化を生み出す者にのみ可能である。それゆえ、彼らは、茶室でおこなわれている高度の風雅によって、その日常生活を律しようと努めた。どんな環境にあっても、心の平静を保たねばならぬ。そして、会話は、周囲の調和を台なしにすることがないように、おこなわなければならぬ。衣服のかたちや色彩、身のこなし、歩き方、すべて芸術的人格の表現足らざるものはない。これらは軽視してはならぬ事柄である。おのれを美しくしなければ、美に近づく権利はないからである。そういうわけで、茶人たちは芸術会場の何ものか、芸術それじたいになろうと努めた。それは審美主義の禅であった。」